人的資本経営とは?成功するポイントについて解説

少子高齢化や価値観の多様化が進む中、優秀な人材の確保と定着は企業にとって大きな課題となっています。単に待遇を充実させるだけでは十分ではなく、社員一人ひとりが働きがいを感じ、生産性や創造性を発揮できる環境づくりが求められています。

そこで注目されているのが、従業員を「資本」として捉える人的資本経営と、柔軟で効率的な働き方を実現する働き方改革です。これらは従業員のエンゲージメント向上や企業ブランド価値の向上にも直結し、持続的成長を目指す企業にとって欠かせない戦略となっています。

本記事では、人的資本経営の考え方や、成功のポイントを解説。従業員の働き方を変えたい方や、企業ブランドをさらに高めたい方の参考になれば幸いです。

人的資本経営とは?

人的資本経営とは、従業員を単なるコスト要因ではなく、企業の「重要な資本(資産)」として捉える経営手法です。人材のスキルや経験、モチベーション、健康、組織文化など、人的要素を積極的に育て、組織の中で活かしていくことを重視します。

重点施策としては、次のようなものがあります。

  • 能力開発…教育・研修、リスキリング、キャリアパスの明確化
  • 働きがい…仕事の意義、職場の風土、上司との関係性などの質の向上
  • ワークライフバランス…柔軟な働き方、リモートワーク、健康経営など

これらの施策により、従業員のエンゲージメントが向上し、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。また、社内風土が強化されることで、求職者や取引先への信頼の獲得にもつながります。

人的資本経営を成功させるコツは?

人的資本経営を推進させるためには、単に労働時間を短くするだけでなく、生産性を向上させることが不可欠です。
 

時短や効率化だけにフォーカスして作業量を減らすことばかり考えると、本来の目的である働きがいや価値創出を損なう可能性があります。働き方改革は、社員が仕事を通じて誇りや成長を感じられる環境づくりと表裏一体でなければなりません。


社員にとって働きがいがある企業という評価は社内でのモチベーションに留まらず、社外への発信を通じて企業ブランドの価値を高め、優秀人材の採用や顧客の信頼にもつながる。理念・ミッションを社内に浸透させ、社員自身が判断基準としてそれを用いる経験を積むことで、内側からブランドを醸成していくことが重視されます。

人的資本経営を実現するステップ

人的資本系を実現するためには、一度に大きく改革することは困難です。以下は、企業が人的資本経営を実践し、ブランド戦略として定着させていくために必要なステップです。

ステップ内容
① 現状把握と課題分析社員の満足度、働きがい、業務フロー、勤務実態(残業時間、休暇取得率など)、離職率などのデータを集める。経営層とのヒアリングを通じて、ブランドとしての現状評価も把握。
② ビジョン・ミッション・価値観の明確化経営陣が何を大切にするか、将来どうありたいかを言語化。これを社員に共有し、判断基準として使う。
③ 働き方制度・組織文化の設計リモート・ハイブリッドワークの導入、フレックスタイム・時短制度、健康・ウェルビーイング施策などを整備。日常的なコミュニケーションや上司部下の関係性強化などの風土改革も含む。
④ 社内浸透とコミュニケーション理念・ミッションを社員が自ら判断基準として使えるようにする。意思決定・企画立案の場に社員を巻き込む。理念の共有やストーリーを語る機会を設ける。
⑤ 公的認証・表彰など外部発信テレワーク推進賞などへの応募、メディアでの発言、CSR報告書・採用広報などで取り組みを可視化・発信する。
⑥ 効果測定と改善サイクルKPI(従業員満足度、エンゲージメントスコア、生産性指標、離職率等)を定める。取り組みの効果を定期的に評価し、必要に応じて改善を行う。

一つひとつの企業によって、抱えている問題や改善策は異なります。問題点を定義したうえで、具体的な対策を進めていきましょう。

必要に応じてツールを導入することも有効

スマートオフィス技術による効率性・快適性の追求」と人的資本経営の考え方は非常に相性が良いです。以下のような形で効果が期待できます。

  • 環境・技術による生産性向上…IoTセンサーやスマート照明、AIによる自動制御などを導入することで、業務中のストレスを軽減し、集中力を高める環境を整備できます。これにより、従業員は「働きやすさ」を実感でき、それが働きがいの向上につながります。
  • 柔軟で多様な働き方の支援…無駄な移動や物理的制約を減らすスマートツール、遠隔会議・予約システムなどが働き方の柔軟性を高めます。これによってワークライフバランスが改善し、組織のダイバーシティや包括性が向上します。
  • データに基づく改善と可視化…従業員の利用状況・オフィス環境センサーのデータなどを集積・分析することで、どの施策が効果を発揮しているかを可視化できます。例:会議室の稼働率、在席率、照明・空調の適切度などのモニタリング。
  • 発信の助けとしてのテクノロジー…スマートオフィスの取り組みを社外に示す際、写真・データ・動画などテクノロジーを活用した証拠を用いることで、「先進的」「働きがいを重視している企業」としてのブランド価値を強調できます。

自社の状況に応じてツールを使用することで、効率のよい改革が実現します。課題とすり合わせたうえで、適切な物を導入してみてください。

まとめ

人的資本経営と働き方改革は、単なる制度導入ではなく、企業の理念や文化、戦略そのものと深く結びついた取り組みです。社員の成長や働きがいを支える施策を通じてエンゲージメントを高め、柔軟な働き方を実現することで、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。

さらに、こうした取り組みは企業ブランドを強化し、採用力や社会的評価の向上にもつながります。スマートオフィス技術の導入など環境面からの支援も加えることで、より効果的かつ持続的な組織改革が可能となるでしょう。